個人的な事情から
私は東京のマンション(12階125戸)に住んでいて、防火・防災担当をしていました。一昨年(2010年)、娘が赤ん坊を連れて泊りに来るというのであわてて寝る場所の家具転用防止をやりました。市販の突っ張り棒は一つだけ使えて、他は梁下との隙間が狭くて入らず、考えてホームセンターでアジャスターボルトを買ってきて木の台座をつけてジャッキにしガッシリ押さえました。左図のような場面を想像して思いっきり揺すってもびくともしないのを確認してから迎えました。大人は(自分も含めて)実際に地震を経験した人でもなければ、なかなか気が付かないが小さな子供の目線で見れば体の何倍もある家具は恐ろしく大きな危険物とわかる。
マンション全体に呼びかけ
我が家の分は終わったので他の皆さんも困っているはずと思い、年末の大掃除時期に玄関ホールで展示説明を一週間やりながら手伝いの必要な戸には取り付けに行き30戸ほど終わりました。費用は部品代のみ実費購入。
明けて3月の大地震
大きな揺れの間2分間程は柱につかまって転倒防止具がどう働くか見ていた。少しもずれないのを確認したあと階段を駆け下りて玄関前からハンドメガホンで各階ごとに安否確認を指示。転倒防止をしていなかった上層階ではいくつもの戸で家具が折り重なった。有志を募って救援に回り、片付けと余震に備えて転倒防止を追加取付。先に転倒防止をしてあった戸には家具の倒れはなかった。その後余震が続いて数戸追加。あれが夜間だったら何人か下敷きになっただろう。
これまでで使用した転倒防止具の種類はアジャスターボルト型52セット、くさび20セット、市販突っ張りポール3セットとなった。マンションでは狭い梁下との間でガッチリ止められる前二種が使いやすかった。
このあとどうすべきか?とかんがえて・・・
自分の回りに関して言えば一段落しており、これ以上やりようがないのかと思いもしたが、ここで終われば何年か後で大地震がおきたらきっと後悔するだろう。出来る限りのことをすべきではないか? 広まるには商品化されて店頭に並ぶのが一番早いと考えて、メーカー数社に手紙とサンプルを送って依頼してみたが、いずれも断りの返事がきた。企業的には商売にならないという判断らしい。考えてみれば市場には商品、部品は売っていても安全や親切そのものは売っていないのだった。このルートは通じなかった。 こういうことは、帰省のたびに年老いた親のために手摺をつけたり、小さい子供が火傷しないよう母親がポットの転倒防止をしたり、隣近所の老老介護世帯に自治会や管理組合の日曜大工好きのおじさんが手伝ったり、手作り・手渡しで広がってゆく筋なのかもしれない。このルートでやってみよう。
経験交流のため耐震補強や家具転倒防止の活動をしているNPO法人:東京命のポータルサイトに参加しました。 インターネット上にも震災後10件ほどですが家具転倒防止についてやりとりがのっています。これらの個人の方とも交流ができればと思い、このサイトを立ち上げました。
私に出来ること
1)家族のため、あるいは周りの人のため上記二種の転倒防止具を作って取り付けてみようという方で、サンプル が欲しいということであれば、連絡下されば送ります。取り付けて揺すってみてください。自分でうまく作れ ないときは、出入りしている親切な工務店さんなどに相談して頼んでみるなどが良いと思います。
2)保障、責任について:私が責任を負えるのは、自分の家のものについてだけです。またこの文章については、 自分の経験範囲で確認したことに基くもので、応用される方は自分で揺すってみるなり確認をして下さい。。
3)転倒防止をひとに奨めるときは必ず、取り付け一週間後、そして年一回防災週間には緩んでないか、ぐらつく ことはないか確かめるよう伝えて下さい。何年か前からつけていた転倒防止具で去年の地震の時、はずれかか っていたものの方が多かったようですので。
*その後2年経って家具転倒防止施工戸数はマンション50戸、戸建てについても22戸になった。どちらも各種器具・材料を組み合わせて一工夫してやれば安全な対策が出来ることが分かった。現在は各地の市民団体等の依頼があれば材料費実費で取り付けにも行くようにしている。一戸当たり家具数5~10個で\5,000~10,000位だった。最初、一緒にやればあとは自分たちでやってもらえるようになるだろう、その手始めだけ手伝います。工事請負ではないので作業費は無し。言わんとするところは、「自分と家族の命を守るのは自身以外にはいない」ので、それをやろうとされるなら、出来る限りの力で手伝いますと。*2017年11月追記
197戸